~語彙力薄弱~

やんわり作品レビューなど

最近やったゲーム「ホチキス」の感想

  映画のレビューをするために本サイトを立ち上げたのはもう3年前のことだ。その趣旨に沿うならば本来直近で観た映画である「武器人間」の感想を書くべきところだが、個人的な趣味に合わなくってあんまり乗り気がしないのでやめておこうと思う。

 

 ここでは先日話をした「キスベル」に続き、戯画キスシリーズの原点となった「ホチキス」をプレイした話、つまりエロゲレビューをしていきたい。


 本シリーズは、ゲームでありながら現実離れしすぎない雰囲気の中で、ヒロインとの学園生活を楽しむことを目的とした作品群だ。公式はこのジャンルを「イチャラブアドベンチャー」と名付けたうえで「キスシリーズ」としてオリジナルブランド(?)を確立した。

 先日プレイした「キスベル」がこのシリーズの2作目にあたる。しかしこれがどうも煮え切らない作品であった。ならば原点回帰ということでこちらを購入したわけだが、正直こちらもなかなかにコメントし辛い作品であった。というかそもそも「言いようのなさ」を書いていくのがここでの目的なのだ。

 

 まずその「なんとも言えないプレイ後感」を出した最大の原因は、共通ルートが冗長な割に、個別ルートに入って以降のシナリオが極端に短いことにある。主人公のセリフを8割吹き替えながらプレイしても個別ルートを終えるまでに3時間すらかからないというのはさすがに痛い。とくに私が攻略したヒロインの「奈々」は、他ヒロインと比較して関係性が特殊(後述)なことも一因となり、”くっつく”までのゴタゴタが共通ルートから地続きで展開された後、イチャイチャやイチャイチャ(性的な意味で)が両手で数えられる程度描かれて終わりを迎える。えっ。感覚的にはちょっと長めのエピローグ的な感じでルートが終わる。

 

 本作は、確実にシナリオで魅せる類のゲームではない。感動シーンの興ざめ感、思考回路がどこか吹っ飛んだ行動をとるキャラなどなど、随所に物申したいところは多いのだが、諸々の問題点はその尺の短さにも起因するはずだ……としてフォローしたい気持ちがある。しかし私先程冗長と言いましたし。ぐぬぬ、これはなるべくしてこうなってしまったものなのである。

 では本作は何ゲーなのか。シナリオでは売れぬ、またいかにヒロインを落とすかを楽しむ「ギャルゲー」(めちゃくちゃ語弊がある)でもなければ、エッチシーンを売りに出した「抜きゲー」でもない。ちなみにエッチシーンは3回、各3ラウンド(※実況内でこの言い方が定着した)。一回当たりの割りと尺は長めな感じ。あんまりエッチシーンだけ何回も挿入されるってのもなんだかなぁ、って思うタイプなのでこんなもんかなぁと。いや節操があったかは別なんですけどね。

で、「本作が何ゲーか問題」の結論としては、私個人はこれを「キャラゲー」なるものであったと評したい。キャラのかわいさひとつで勝負に出た作品だ、とか言っても過言ではないように思う。

 

 とはいえ本作でいちばん残念なところは、これを「キャラゲー」としたところで、それをやりきれなかったように感じられてしまう部分だ。今回攻略した奈々のポテンシャルは非常に高いのに、シナリオの中でそれを生かしきれなかった。

 

 そう感じる部分はとくに共通ルートにある。「幼馴染」を理由にいちいち悪態をつく奈々と、それに対してどこか掴みきれない(煮え切らない)反応をする主人公の歪な関係がひたすら描かれる。この時点では、言うなれば彼女はヒロインというより「生意気な妹分」であり、そのサブキャラ的ポジションからは絶対に抜けられないように思われて仕方ない。

 しかもシナリオライター、最初の方不思議ちゃんキャラをやらせようとして途中で挫折しただろ。「ぐっばいあでぃおす」あたりのよくわからんセリフ回し、私は忘れてないぞ。

 

 そんな共通ルートの奈々だが、(なかば無理やり)個別ルートに入ることで、主人公との関係性の変化・進展が起こり、ようやく彼女の魅力が見えてくる。「妹ポジション」から脱するために、いつも助けてくれた主人公に対して必要以上に強がり、不器用にもがくことから始まる個別ルート。しかし彼女は、自分の中で「手段と目的」が次第に変化していることに気づいてしまうのだ。なぜ自分は関係を変化させたいのか?この気持ちは好意なのか?と悩む様子がまたもどかしい。そうやって奈々の内面がわりとしっかり描かれていることには好感が持てる。長いけど。

 

 といった感じで諸々の葛藤を乗り越えて彼らは結ばれる。付き合うとなるとその関係性はこれまた一気に変わってくるわけで、今まで耐えたプレイヤーへのファンサービスともいわんばかりに彼女は主人公に対して甘えに甘える様子が描かれ、しかもそれがかわいいんだから、こっちは共通部分とのギャップにしてやられてしまう(※私は単純なのでそうやってうまく乗せられているが、実際キャラ崩壊とか受け取る人も多くいるとは思う)。

 もはやその関係はバカップルの一言に尽きる。知能レベルまで低下したかのようなやりとりが描かれるのは嬉しいやら疲れるやら。でも、やるならもっと早くから、こういうのでいいんだよ、という感じが否めない。しかしデレデレ。主人公も、私も。

 

 まぁ確かに本作はシナリオに粗が目立つし、展開も雑なことが多い。でも個別ルートに入ってからのカップルを描くシーンにはかなりこだわりがあるように思うし、そこがいちばん評価したいポイントだ。「同棲(実質)してるけどデートの時は待ち合わせにする様子」とか「ピロートークでめちゃくちゃイチャつく」あたりの描写の丁寧さにときめいてしまって、なんだかんだ嫌いになれない。イチャラブコミュニケーションの本領発揮である。

 そこまで描けるのは本作ならでは、もといこのシリーズならではの強みなんだろうか。ラブコメというジャンル、多分本作はそれにもあてはまるのだと思うのだが、そこに属する女性向け作品の多くは、「付き合った後の色々を描く」ことを趣旨にしているのに対して、男性向け作品の多くは「紆余曲折あって付き合う」ことを話のオチとして持ってくることが多い。

 私はかねがねそんな傾向がちょっぴり不満だった。そんな中で、本作は男性向けながらそこらへんの「いいとこどり」をしてくれているように感じている。

 

 見たかったものを見せてくれたように思う一方で、少しばかり期待しすぎてしまった気もする本作。前回同様ほどほどにのめりこんで楽しめたので、まぁ及第点としたい。何様だよって話なんですけどね。