~語彙力薄弱~

やんわり作品レビューなど

最近やったゲーム「キスベル」の感想 (後編)

 8年前に発売されたゲームをプレイしてみた結果……という話を、引き続き備忘録として書いていく。

 

 今からきっかり7年前、アニメ「D.C.Ⅲ」を見るようになって初めて「2次元美少女」というコンテンツに向き合い始めた私に対し、友人はおすすめのモバイルゲームがあると言って1枚の画像を送ってきた。それが「長津田さん」との出会いである。それはまさしく一目惚れ、さながらオーバーキルといったところであった。

 

 どうやら長津田夕美というキャラクターは、現在も続く「キスシリーズ」において屈指の人気キャラらしい(2020年現在)。大人しそうで整った顔立ち、上から下まで理想的すぎるスタイルの曲線美、ううむなるほど完璧なキャラデザである。しかし彼女はそれだけで形容すべき者ではなかったと、プレイしてみることで改めて思い知らされることとなる。
 頭が良い、顔も良い、スタイルも良い、実家が太い、そして育ちまで良い(ついでに声もいい)。なにもそこまで。と言うべきほどに彼女はハイスペックであり、本来ならば主人公のような人間(頭が悪い、ノリと勢いで生きている、生活力皆無、等)とは対比されるような存在である。

 しかしながら作中では、その対比されるような設定が逆説的に働くおかげで、主人公との関係が恋愛へと発展していくように描かれているのが特徴的だ。

 

 いわゆるお嬢様タイプゆえに俗世間というものに疎い彼女にとって、俗世間を具現化したように振る舞う主人公の姿は、とても異質なものとして写る。序盤での彼女は、その異質さに対し露骨に距離を置くのだが、物語が進むにつれて主人公という存在に対して興味を持つようになっていく様子が見られる。そしてルートに入って、いつのまにか彼女の「主人公に対する興味」は「好意」へと変わっていたことを自覚するのだった......といったところか。

 

 正直な話をすると、「初めて出会ったときから、万が一にもこうなっている(付き合っている)かも、と思っていた」というほど主人公にベタ惚れな彼女であるが、どこらへんで恋愛感情が生まれてたのたかよくわからなかったりする。そういえば映画「君の名は。」の感想でもこんなこと書いた気がする。まぁ本人たちもそれを自覚出来てなかったみたいだし......主人公も気遣いとかうまいところあるし……みたいに割り切るのが吉。考えすぎて忘れてたけど、これエロゲだったんだよな。小説とかじゃないもんな。

 

 しかしこの不釣り合い感が、長津田さんルート最大の問題点となる。長津田さんが完成されすぎていて、くっついたらくっついたでとくに進展させることがないのだ。

 他のヒロインはそれぞれ課題というか葛藤を抱えている。ゆえに付き合った先では主人公が彼女たちの支えになるとか、努力するとか、そういう役割を担うことになるはずだ(※他ルート未プレイ)。

 しかし本ルートはただただ主人公が堕落し、厳しかったはずの長津田さんは「私はいいのよ」「しょうがないわね」を多用するようになる。いやよくないやろと何度か叫んだ。クリスマス会もあっさり終わり(ただしイベントは3ラウンド制で割と長め)、それも無くなってしまった後はシナリオ的にもより冗長なものとなるだけであった。

 そして彼らは、自分たちの関係性がだいぶこじれてきているということを「周囲から自覚させられて」二人で主人公更生への道へ進むことになる。なんか周囲の人たちが世話焼きすぎじゃないかとも思う。付き合ったきっかけにしてもそうだが、付き合った後もやたらと干渉してくるあたり老婆心からなのだろうか。

 でもこうでもしないと主人公と長津田さんは付き合わないんだろうな、と冷静になってしまう自分もいたりする。

 何かシナリオを知ってそうというか、やたらメタい気がするセリフ回しをする元生徒会長とか男友達のことを、私は勝手にゲームマスターやってるだろとか思っていた。

 

 でもそんな長津田さんのイメージの崩壊は、シナリオ的には微妙だったわけだが、いちプレイヤーである私的には悪いことばかりではない。

 厳しくて気高い、でもちょっと魔性。そんなイメージだった彼女は付き合いだすと、必殺技「甘える」を披露してくれる。長津田さんはそんなこと言わない!とか頭では思っていても、こちらとしてはそのギャップに見事にしてやられてしまう。恥じらいながら「好き。」とか言ったり、おねだりしてきたりとか、そういう今まで決して見せてくれなかったデレの部分をさらけ出す。もはや誰だよと。

 そして情事に経験はないけど興味はある。そんな処女信仰の聖典にでも書かれたような彼女の性格設定は、とくにベッドシーンで魅力を発揮する。意外とノリノリで主人公のスケベなノリに付き合う彼女には「どうしてこうなった感」はあるものの、友達関係では見れなかった部分を見ている感じがして、なんだか悔しいがめちゃくちゃドキドキしてしまう。

 とくに初体験時の恥じらいがめちゃくちゃかわいい。個人的には、「えぇ……!?まだ半分なの……!?」などと彼女が取り乱す様子はなかなか見物だ。多分私はそこで「長津田さんはこんなこと言わない」という壁みたいなものが崩壊したんだろう。

 そして後半になるにつれ悪化するバカップルぶり。「いつもこうなんだから、仕方ないわね。」いや仕方ないとかじゃなくてさ~。ルートに入ったらただのドスケベバカップル化するのは予想外であり呆れ果てたが、私的にはえっちなのは嫌いじゃありませんのよ。ムムム。

 

 総じて、ヒロインとして彼女はとても魅力的だ。ルートではその魅力を生かしきれていない感じがして、私的には少し惜しかったが、エロゲってこういう、痒いところに手が届かないものなのかもしれない。完璧を求めるのはよくない癖だ。

 7年前から自分が想像していた長津田さん像はかなり変化した。当時見ることができなかった部分を楽しめたこともあり、たまにはこういうのもありだなと思う。

 

 しかしこうやって長々書いてしまうあたり、たぶん私にエロゲは向いてない。