~語彙力薄弱~

やんわり作品レビューなど

レビュー第7回「ヴェノム」を観てきました

【レビュー第7回 ヴェノム】

 

 巷でそこそこ話題になっている本作を観てきました、と言っても1ヶ月前なんですが。ただでさえ筆が遅いのに、本業の課題に追われて余計に遅くなりました。ブログ11月更新分 ヴェノムのレビュー、やっていきます。


【こんなの】
 好奇心と行動力だけは高い男エディ・ブロックは、世の中のあれこれにズケズケと踏み込むテレビ取材(最初はYouTuberかと思った)で、巷でそこそこ人気を博していた。

 しかしその好奇心と行動力が災いした。宇宙開発で名乗りを上げる「ライフ財団」が謎の人体実験を行っていると聞きつけ、意気揚々と乗り込んでいくエディであったが 大財閥の闇に首を突っ込んだ彼は仕事も彼女も奪われたうえ、自らを「ヴェノム」と名乗る謎の寄生生物シンビオートに寄生されることになってしまう。謎の宇宙開発・人体実験を行う財団の真の目的とは何か。そしてエディに寄生したヴェノムとは何者なのか……。

 

【偏見雑記】
 ~というのが本編中盤までの内容。予告やCMを見てしまえばそれぐらいは大体わかっちゃうのだが、本編ではけっこう時間を使ってそこまでの話もといプロローグを見せてくれる。痒いところに手が届きすぎて湿疹ができたみたいな感じだ、序盤は。実質的主役が画面に不在のまま話が進み スローテンポに退屈し始めた頃、やっとこさその姿を見せてくれることになるヴェノム君。これが重役出勤か。

 そんな本日の主役とばかりに堂々登場したヴェノム君、その有機的な禍々しさはなかなかお目にかかれない部類のCG表現である。エディの全身を覆うのはボディスーツではなく生物的な皮膚であり、それはまさしく異形そのもの、クトゥルフなんたらでも見覚えがある気がする気持ち悪さとカッコよさの両立に成功している、たぶん。そんな怪物が触手みたいなのをグワッと伸ばしたりしてアグレッシブに動き回る姿を見て、そこで初めて「そうそう俺はこれを観に来たんだよ~」とか実感することになるのだ。


 しかしながら、どうもそこが映画としての見せ場であるはずなのになんだか「惜しい」。「グロテスクな表現に配慮している説」とか 「CGに余計なコストかけたくない説」とか理由は色々考えられるけれど、カメラワークの移動とカット割りが非常に多かったり、視界がはっきりしない環境で戦闘したりと故意に見にくくされている印象を受ける。

 おかげで事前の想像以上に短めだったアクションシーンが実質的にはさらにあっさりしたものに感じられるわけでして。最凶バイオレンスアクション!的な宣伝の仕方をされていた作品だけあって、そこらへん個人的には若干物足りなさがあったり。

 でも内心グロテスクな描写に身構えてた部分もあるので、本当のところちょっと安心した自分がいたりもする。なんというか、腹八分目の方が(精神)健康上良いのかもしれない。いやあの予告観たらとても初心者向けとは思えないじゃないですか。PG-12作品にはキングスマンGCに騙された過去があるんだ、私は。


 まぁ公開後には宣伝方法が一転して、ヴェノムはカワイイ路線とかカップリングさせて腐女子受けを狙う路線になったのもたいがい変な話だと思う......。が、実際の本編では割とそれを感じる瞬間がけっこうあったりするから、断じてそれらの宣伝は「嘘予告」なんかではない。

 ヴェノムはエディの体調や人間関係にいちいち気を使ってくれたりする世話焼きおばさんっぷりを見せつけたかと思えば、エディが「俺は~」から話を始める時、すなわち「I」から語りだす時、ヴェノムはすかさず「We……」と訂正してきたりもする。そういうところ抜かりないよね。通常時二心同体の彼らにとって、一人称は「We」なのだ。センスが光る。「私がアイアンマンだ」にオマージュを捧げる「俺たちがヴェノムだ」というセリフはアツいだけじゃなく、や○い文化的な視点から見たってそれは完璧すぎるものなのでは。一応断っておくと、シンビオートに性別はないらしい。


 さて、そろそろ話をまとめる努力をしてみる頃合いである。本作は、確かに序盤のテンポは良いとは言い難いが、基本的にはノリと勢いで押しきろうとする姿勢が実に小気味良いものだった。とくに映画中盤以降のプッシュはすさまじく、キャラ的にブレブレな登場人物と粗の多い設定に振り回されながら、スケールの大きいようで意外と小さいバトルを繰り広げる……。ええ、これでもだいぶ褒めてるつもりなんですけれども。

(※アメコミ原作に設定云々の話をするなよ、と言われそうだが、劇中内の設定矛盾とか気になる点はあったので、もう少しそこらへんをフォローして欲しかったりした。)

 ともかく本作というものは(関係者には大変失礼な話だが)「考え抜かれたシナリオ」って感じではない。内容だけ聞くなら硬派っぽいが、やってることは実際ソフトだ。あんまり深く考えずに勢いに身を任せて気楽に観れる、こういうジャンルの映画にしては珍しい仕上がりである。ポジティブに考えれば、長所と短所は表裏一体だったってわけだ。そういう軽いやつって、観るの楽しいじゃないですか。私は好きですよ。

 

.....本作の出来に関して、多少テンポが悪いのは抜きにしたうえで往年の名作(?)「コマンドー」みたいなところがあるように感じたのは私だけだろうか。あれを最初に観たとき、当時の私はたぶんヴェノムを観た今と同じ感覚だった。

 つまりそれは「なんだこれ、面白いじゃん」という、とても平べったい感想なのである。 

 

 

 今回はここまで。 ありがとうございました&お疲れさまでした。

 年内にもう一回更新したいですね......。